はじめに
奈良を代表する寺社仏閣として、興福寺・東大寺・春日大社は余りにも有名です。しかし余りにも有名である事で、世界文化遺産「古都奈良の文化財」の構成要素としてじっくりと散策する事が意外に少ないと言えるでしょう。
本記事では、興福寺・東大寺・春日大社の余り知られていないスポット、穴場スポットとも言える部分にフォーカスして紹介したいと思います。
興福寺
興福寺の起源は飛鳥の厩坂寺で、平城遷都の際に藤原不比等によって奈良に移され、この時に名前を興福寺と改められたものです。法相宗の大本山として、奈良時代には天皇・皇后や藤原家の庇護を受け、大いに栄えました。
現在の興福寺の伽藍としては、国宝の東金堂・五重塔・北円堂・重要文化財の南円堂・大湯屋等が建ち並び、2018年秋には中金堂が再建され、朱色の立派な本堂として姿を現しました。そんな興福寺では東金堂と五重塔が並び建ち、また再建なった中金堂の一帯に観光客が集い、鹿と戯れたり記念写真を撮ったりしています。
しかしこの興福寺に国宝の三重塔が存在する事は余り知られておらず、それほど広くない境内の南の隅にひっそり建っている三重塔を訪れる人はほとんどいません。

興福寺の伽藍配置として五重塔は創建時から現在の位置にありましたが、何度も火災に遭い、現在の塔は1426年に再建されたものです。一方の三重塔は創建時ではなく、後の1143年に崇徳天皇の中宮により寄進建立され、1180年には火災で焼失するもすぐに再建され、現在の興福寺に残る建造物の中では、北円堂と並び最も古く、現在の五重塔よりも200年以上も前に建造された平安時代の建築様式を伝える優れた歴史的建造物として国宝に指定されているのです。
興福寺を訪れた際には、この知られざる国宝の塔を探して、ぜひ鑑賞して欲しいものです。
東大寺
東大寺は聖武天皇が子供である基親王の菩提を追悼するために728年に建立した金鍾山寺がその起源で、国分寺・国分尼寺(金光明寺・法華寺)の建立の詔が発せられ、昇格して大和金光明寺となったのが東大寺です。
その後752年に巨大な盧舎那仏(大仏)が建立されました。大仏・大仏殿は2度も焼失し、現在のものは江戸時代に再建されたもので、当初はさらに大きかったとの事です。
多くの観光客が訪れる東大寺ですが、国宝の南大門をくぐり、国宝の大仏殿にお参りし、それで東大寺見学を終える方が少なくありません。一部の方は大仏殿の東側にある国宝二月堂・国宝法華堂・鐘楼等の建造物を観賞されて春日大社等へ向かわれます。
しかし東大寺には、重要な意味を持つ建造物として大仏殿の西側に戒壇院が、西北に国宝の転害門があります。

戒壇院は聖武上皇が光明皇太后らと共に、鑑真和上から戒を授かり、翌年に日本初の正式な授戒の場として建立されたものです。現在の建物は江戸時代に再建されたものですが、その内部に祀られている国宝の四天王像は奈良時代の塑像の最高傑作と言われ、ぜひ鑑賞すべき素晴らしい仏像です。
もう1つの転害門は境内の北西にあり、三間一戸八脚門の形式をもつ堂々とした門です。東大寺の建造物の多くが火災に遭遇し、奈良時代のものは残っていませんが、この転害門は修理を経ているものの、奈良時代のものであり、天平の東大寺の伽藍建築を想像できる唯一の貴重な建造物なのです。
東大寺境内の忘れられた西側エリアの貴重な文化財スポットもぜひ訪れたいものです。
春日大社
春日大社は奈良に都が移された1300年前頃に、国家の繁栄と国民の安寧と幸福を願い、鹿島神宮から武甕槌命(タケミカヅチノミコト)を神山御蓋山(ミカサヤマ)にお迎えしたのが始まりとされており、その後に香取神宮から経津主命を、また枚岡神社から天児屋根命、比売神をお招きし、合わせて4柱が現在の地に祀られ、春日大社となりました。
春日大社は朱塗りの南門から入り、回廊で囲まれた境内には幣殿と舞殿があり、その奥に4柱を祀る本殿が並び建っています。多くの方はこの拝殿からお参りし、西側の回廊にある吊り燈籠を見る程度で世界文化遺産である春日大社を後にされます。
しかし春日大社の神域は非常に広く、そこに摂社・末社として合わせて61社も祀られています。せっかく春日大社を訪れたなら、この中の若宮十五社巡りか、水谷神社を合わせて訪れたいものです。
若宮十五社は本社から南のエリアにあり、この十五社の中には夫婦大國社があり、縁結びの神として知られています。可愛いハート形の絵馬に願いを書いて奉納されると良く、若い女性に特にお勧めの隠れスポットです。

また水谷神社は本社から西の若草山に向かった所にあり、近くには茅葺屋根の水谷茶屋があり、鄙びた風情の中でゆっくり休憩する事が出来ます。また奈良市内の紅葉の名所としても有名で、知られざる立ち寄りたいスポットと言えます。
まとめ
余りにも有名な興福寺・東大寺・春日大社ですが、今回ご紹介した知られざるスポットも巡り、これらの寺社の奥深さを十分に楽しまれる事をお勧めします。
